職場で起きるモラハラの定義と事例
職場のモラルハラスメントは、暴力ではなく言葉や態度で相手を追い詰める行為です。相手の尊厳を傷つけたり、仕事の情報や人間関係を使って不利益を与えたりします。繰り返されると、心身の不調や離職につながりやすいのが特徴です。
よくあるのは、人格を否定する言い方や、わざと孤立させる働きかけです。過大な要求や過小な要求も含まれます。さらに、私生活への過度な干渉が重なる場合もあります。ここでは、現場で起きやすい具体例を五つに分けて整理します。モラルハラスメントの早期発見と防止のための目安として、日々のやり取りに当てはめて読んでください。
精神的な攻撃
精神的な攻撃は、相手の価値を傷つける言動が中心です。みんなの前で恥をかかせる、能力を決めつける言い方を続けるなどが含まれます。会議での皮肉やため息、返信での突き放す表現が積み重なると、萎縮や自己否定が強まります。
メールやチャットで強い言葉だけを投げるのも要注意です。深夜に長文で叱責し、翌朝の対応を急がせるやり方は負担が大きいでしょう。評価面談で過去の失敗だけを繰り返し取り上げ、努力や改善を無視する対応も同様です。
短時間でも強い刺激が続くと、眠れない、集中できないなどの不調が出ます。言い返しにくい関係で起きやすいため、記録を残し、第三者に相談できる窓口を意識しておくと被害の拡大を防げます。
人間関係からの切り離し
人間関係からの切り離しは、見えにくいのに影響が長引きます。プロジェクトのチャットから外す、会議招集を伝えないといった形で情報を遮断します。結果として、仕事の判断や品質に遅れが出て、さらに責められる悪循環が生まれます。
昼休みの誘いだけでなく、学びの機会まで外すのも問題です。部署の勉強会や顧客訪問に同席させず、経験を積ませない状態が続くと、成長の機会が奪われます。これは本人だけでなく、チームの力も弱めます。
こうした切り離しは、表面上は穏やかに見えます。ですが、当人は孤立感に耐え続けることになります。欠席扱いにされないよう、議事録やスケジュールの共有ルールを整え、参加の扱いを透明にすることが予防の鍵になります。
過大な要求
過大な要求は、達成が現実的でない仕事を一方的に任せる行為です。短納期で大規模な作業を指示し、権限や人手を与えないまま結果だけ求めるのが典型です。失敗すると厳しく責め、成功しても評価しない構図が続きます。
新人に責任だけ重い役目を押し付けたり、勤務外の時間まで当然のように期待したりするのも該当します。また、他部署の調整が必要なのに協力を禁じるなど、達成条件をわざと狭める場合もあります。
見極めの目安は三つです。
・目的に対して、期限と資源が釣り合っているか
・本人の経験で、学びと安全が確保されているか
・やり直しや相談の入口が開かれているか
この三点が崩れているなら、過大な要求に当たるおそれがあります。
過小な要求
過小な要求は、能力や役割に比べて明らかに軽い仕事しか与えない状態です。資料の印刷や備品確認だけを延々と任せ、専門性を使う場面を与えないやり方が続くと、意欲の低下や離職につながります。
一度の配慮が長期化する場合にも注意が必要です。体調不良のあとに段階的な復帰を支えるのは大切です。しかし、改善後も以前の業務に戻さないままだと、本人の評価や給与にも影響します。
仕事を外す理由が曖昧なときは危険信号です。面談で目標を共有し、担当範囲を客観的に決め直すと偏りが減ります。小さな成功体験を積めるタスクを計画的に用意し、定期的に見直すことで、過小な要求の固定化を避けられます。
個の侵害
個の侵害は、業務と関係のない私生活への踏み込みです。家族構成や恋愛、宗教や政治の考えをしつこく聞く行為は避けるべきです。外見や体型、年齢に触れる発言も、本人の尊厳を損ないます。
私物や端末の中身を無断で確認する、位置情報やSNSの投稿を常時監視するなども問題です。社内イベントへの参加を強く迫り、断ると評価を下げるといった圧力は、個の自由を脅かします。
線引きの基準は、業務上の必要性と同意の有無です。目的が仕事に直結し、合理的な範囲で、本人の納得が得られているかを確かめます。疑問がある場合は、質問をやめ、別の方法で業務を進める配慮が求められます。
モラハラ認定の判断基準
モラハラかどうかは、一つの出来事だけで決まりません。相手との力関係、言動の妥当性、受け手の環境への影響を合わせて見ます。
本章では、三つの観点を具体例とともに整理します。記録の取り方や確認ポイントも押さえ、モラルハラスメント防止に役立つ判断の軸を持ちましょう。
優越的な関係を背景とした言動
ここでいう優越とは、役職だけを指しません。業務の鍵情報を握る、評価権限を持つ、雇用やシフトを左右できるなど、立場上の影響力全般を含みます。派遣や嘱託、アルバイトなど契約形態の違いが力の差を生む場合もあるでしょう。
例えば、担当交代をちらつかせて従わせる、教育を口実に私見を押しつけるといった行為は危険です。輪から外れる不安を利用し、同調を強いるのも該当します。チーム内の序列や依存関係が強い場ほど起きやすいのが現実です。
判断の目安は、相手が断れたか、代替の選択肢があったかです。言い返すと不利益が生じる空気があるなら、優越性の影響を疑います。会話ログや指示の経路を残し、第三者が関係性を追える形にしておくと、後の検証が容易になります。
業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
仕事の指示は必要ですが、目的達成に合理的であることと、手段が節度を保つことが条件です。過度な叱責、人格への言及、深夜の連絡強要、権限を与えないまま結果だけ迫る行為は相当性を欠きます。公開の場での長時間の詰問も同様です。
見極める際は、目的、場所と時間、表現の強さ、回数と継続期間をセットで確認します。また、同じ内容でも新人か熟練かで求める水準は変わります。相手の経験や健康状態を踏まえず、一律に高い負荷をかける運用は、範囲超過に当たるおそれが高いと考えましょう。
記録は短文で十分です。誰がいつどこで何を言い、どんな結果になったかを残します。可能なら、同席者やチャットの履歴など客観資料と合わせ、業務目的との関連も一行添えると判断が安定します。
労働者の就業環境が害されること
最後は結果の視点です。不安や恐怖で相談や反論ができない、睡眠障害が続く、遅刻や欠勤が増える、パフォーマンスが落ちるなど、働く場の安心が失われていれば要注意です。周囲も発言を控える雰囲気になっているなら、組織全体の害に広がっています。
確認の手がかりは、産業医や人事面談の記録、勤怠の変化、評価コメントの偏りです。個人の性格に帰して終わらせず、出来事との因果を時系列で並べます。チームの離職や配置換えの増加も、環境悪化のサインとして捉えるとよいでしょう。
環境が傷んだ状態を放置すると、被害者だけでなく周囲も消耗します。早期に負荷を緩め、関与者を分け、相談窓口へつなぐことが回復の第一歩です。必要な支援を示し、再発防止の手当てまで含めて検討します。
モラハラを防止するための有効な対策方法
モラハラ防止は、人と仕組みの両面から進めると効果が出やすいです。まず、会社としての考え方を言葉にし、判断の基準をそろえます。
次に、その方針を日常の運用に落とし込みます。周知や学びの場を設け、迷った時の相談経路を一本化します。最後に、事後対応と再発防止までを一連の流れとして整え、継続的に見直します。
モラハラに対する方針の明確化
方針は、会社がどこまでを許容し、どこからが不適切かを示す土台です。定義、判断の観点、具体例、相談手順、懲戒を含め、一つの文書にまとめます。抽象的な表現だけだと迷いが残ります。現場の言い回しや、よく起きる場面を盛り込み、判断しやすい形にしましょう。
管理職の役割も書き込みます。注意喚起のタイミング、関係者の切り離し、記録の取り方などを決めておくと、初動がぶれません。モラルハラスメント防止を人事任せにせず、各部門が担う行動を明記すると、実行力が上がります。
公開範囲は社内ポータルや就業規則が起点になります。採用や評価の場でも同じ方針を使うと、一貫性が保てます。年に一度は見直しの場を設け、事例からの学びを追記していくと良いでしょう。
社内での周知と啓発
方針は作っただけでは届きません。定期研修、短時間のマイクロラーニング、朝会での事例共有など、複数の入り口を用意します。新人や管理職、現場リーダーで教材を分けると、響く内容が変わります。また、匿名で回答できる理解度チェックを組み込み、弱い箇所を補強します。
次のような工夫で定着が進みます。
・社内チャットに毎月の一問クイズを配信する
・会議体の冒頭で一分間の確認事項を回す
・朝礼での声かけ例をテンプレにする
研修は一方向の講義だけにしないことが大切です。ロールプレイとフィードバックを入れると、言い方や距離感の調整がつかめます。ポスターやステッカーの掲示、掲示板での注意喚起も、日々の目に触れる仕掛けとして有効です。
相談に対応するために必要な体制の整備
相談体制は、入口の多さと処理の速さが鍵になります。上司、人事、社外窓口の三つを標準とし、匿名でも申出できるフォームを置きます。受付から初動までの目安時間を決め、受領連絡と今後の流れを短く伝えると、安心感が高まります。
対応の基本は、事実の確認と安全の確保です。関与者の業務を一時的に分け、必要に応じて在宅や配置転換を検討します。記録は時系列で残し、関係者の発言は要約でそろえます。医療や産業保健へのつなぎ方も、手順として備えておきましょう。
調査後は、注意、指導、懲戒、再発防止のフォローまでを一体で実施します。対象者だけでなく、周囲のケアにも目を向けます。振り返りで学んだ点を方針や研修に戻し、モラハラ防止の仕組みを継続的に強めていく姿勢が求められます。
ハラスメントの意識が高まっている昨今、中小企業にも対策を義務化する「パワハラ防止法」などが制定されました。
「コマッタサン」は、従業員が安心して報告・相談できる社外窓口として社内のハラスメント対策になるとともに、被害者の不要な退職を防ぎ、採用にかかるコストを削減できるサービスです。

まとめ
本記事では、モラハラの定義と事例、判断の着眼点、予防の進め方を整理しました。見えにくい行為でも、優越性、相当性、就業環境への影響の三点で確かめれば、判断の手がかりが見えてきます。記録を残し、第三者の視点を入れることが支えになります。
予防は、方針の明確化、周知と学び、相談体制の三つを一体で回すことが要です。日々の言動を見直し、小さな違和感の段階で声を上げやすくします。迷ったら早めに上司や人事、社外窓口へ相談し、組織全体で再発を防ぎましょう。
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