職場で起きるマタハラの定義と事例
この章では、職場で起きやすいマタハラの型と、実際に起こりやすい事例を整理します。マタニティハラスメントは、妊娠や出産、育児休業などに関連して、働く人の不利益や嫌がらせにつながる行為を指します。表面化しづらく、本人も我慢しがちです。まず全体像をつかむことが防止の第一歩になります。
制度の利用を妨げる言動、妊娠中や産後の身体状態に関する心ない発言、配置転換や評価での不利益など、形はさまざまです。どれも仕事の継続や安心に直結します。ここで典型例を知り、社内での早期発見と予防につなげましょう。
制度の利用に関する嫌がらせ
育休や産休、時短勤務などの制度を使おうとすると、申請を引き止めたり、手続きを遅らせたりする行為があります。形式上は認めつつ、実質的に使いづらくするケースも見られます。例えば、申請のたびに理由書を何度も書かせる。会議のたびに利用の是非を問い直す。代替要員がいないから我慢してほしいと圧をかける。どれも制度利用の権利を細らせます。
制度は就業継続のための土台です。上司や人事が手順を明確にし、本人の希望を早めに聞き取ることが大切になります。業務の引き継ぎ計画を先に決め、周囲の負担感を言い訳にしない運用へ整えると、心理的な障壁が下がります。マタニティハラスメントの防止には、この入口のつまずきを無くす意識が欠かせません。
状態に関する嫌がらせ
妊娠中は体調が日々変わります。つわりや通院での勤務調整を求めた際に、怠けていると言われる。体調不良を理由に重要案件から外す。休憩や在宅の申請に対し、特別扱いだと茶化す。こうした言動は、本人の不安や罪悪感を強め、働き続ける意欲を奪います。見えにくい負荷が積み重なる点が問題です。
対応の基本は、医学的配慮と業務の両立です。医師の指示や本人の申告を尊重し、勤務時間や場所の柔軟化でカバーします。業務の目的を保ちながら役割を再設計することで、外しすぎや放置を避けられます。周囲には基礎知識を伝え、問いかけ方や声のかけ方をそろえると、無自覚な傷つけを減らせます。これが結果としてマタハラの防止につながります。
不利益な取り扱い
妊娠や産休、育休を理由に、降格や減給、評価の引き下げ、契約更新の見送りなどが行われる場合があります。表向きは業務上の都合とされても、時期や経緯を見ると妊娠等との関連が濃いことがあります。配置転換で通院が困難になる、出産直前に役割を外され復帰後も戻れない。こうした連鎖はキャリアを断ちます。
不利益の有無は、決定の根拠と比較対象が鍵になります。評価なら基準と実績の整合、配置なら健康面と通勤事情の確認が必要です。本人への説明記録や選考プロセスの可視化を徹底し、妊娠や育休の予定を理由に判断しない線引きを明確にします。継続的にデータを見直し、偏りがあれば早期に補正することで、マタニティハラスメントの防止に直結します。
マタハラ認定の判断基準
この章では、どのような場合にマタハラと判断されるのかを整理します。判断の軸を持つと、感情に流されずに対応できます。
因果関係や時期の近さ、不利益の有無、業務上の理由、就業環境への影響を順に確認します。社内の記録と照らし、説明できる状態を保つことが、マタニティハラスメント防止の土台になります。
妊娠・出産・休業等との「因果関係」があるか
まず、言動や人事判断が妊娠や出産、育休の取得と結びついているかを見ます。出来事の前後関係、発言の内容、手続きの流れを総合して判断するのが大切です。
例えば、妊娠を伝えた直後に評価が下がった。育休申請の相談を機に配置替えが決まった。こうした場合は、理由の説明と証拠が必要になります。曖昧なままだと因果関係が推測されやすいでしょう。
また、本人側の勤務状況や実績もあわせて確認します。従前の評価推移、目標達成度、指導履歴などです。記録が整っていれば、関係の有無を客観的に示せます。判断の結論は、本人にも丁寧に伝えます。
「時期」の近接性
出来事の時期が近いほど、関連が疑われやすくなります。妊娠の申告や休業の申請後、間をおかずに不利益が生じたかどうかを確認します。日付と経緯を時系列で整理すると、見落としを防げます。
人事上の判断が年度区切りや組織改編と重なることもあります。全社方針による見直しなのか、個別事情なのかを明確に分けることが重要です。説明資料の作成と保管を習慣化すると安心です。
また、前触れのない突然の決定は、疑念を強めます。事前の面談や通知、改善の機会があったのかを記録で確認しましょう。準備期間や告知の有無が、近接性の評価を左右します。
「不利益な取り扱い」に該当するか
降格、減給、賞与評価の低下、契約更新の見送り、通勤困難な配置転換などは、不利益に当たり得ます。名目が業務都合でも、結果が著しく不利なら注意が必要です。内容と程度を具体的に比べます。
同じ条件の他の社員と比べて差が大きいか。元の役割に戻る道筋が示されているか。通院や安全面への配慮が欠けていないか。これらを丁寧に検討します。判断メモを残すことで後の説明がしやすくなります。
また、本人の希望を聞かずに一方的に決める対応は、不利益と受け取られやすい傾向があります。面談で選択肢を提示し、合意形成を図ります。合意できない場合の理由も書面で整理します。
業務上の「正当な理由」があるか
業務量の急増や安全上の配慮、資格要件の変更など、客観的な必要性が明確なら、正当な理由となり得ます。ここで大切なのは、目的と手段の釣り合いです。過剰な措置は避け、代替案を検討します。
たとえば、長時間の立ち仕事が続く部署なら、一時的な負担軽減や在宅の活用を先に検討します。いきなり降格ではなく、役割の再設計で目的を満たせるかを考えます。説明可能な選択が望ましい対応です。
また、決定までのプロセスが公平かどうかも見られます。基準の適用が一貫しているか、関係者の意見聴取が行われたか、記録が残っているか。これらが整っていれば、正当性の裏づけになります。
就業環境が「害されている」か
最後に、職場の雰囲気や働きやすさが損なわれたかを確認します。心ない発言の繰り返し、孤立を招く対応、必要な情報からの排除などが続けば、就業環境は害されます。頻度と継続性の把握が要点です。
本人の健康面や業務遂行への影響も見ます。通院の妨げ、ストレスによる体調悪化、ミスの増加など、具体的な変化を記録します。第三者の目で事実関係を整理し、改善策とセットで対応します。
また、相談後の扱いにも注意が要ります。相談を理由に役割を外す、評価を下げるといった報復は、環境悪化を深めます。相談窓口の独立性を保ち、守秘と再発防止の手当てを明確にします。
マタハラを防止するための有効な対策方法
この章では、社内で今日から始められるマタニティハラスメント防止の実践策をまとめます。方針を決め、周知し、相談体制を整える。順番に手を打つだけで、現場は大きく変わります。
大切なのは、紙の規程だけで終わらせないことです。管理職の行動に落とし込み、評価や人事運用にも反映させます。相談があった後のケアや再発防止までをひと続きにして、継続的に見直す。これが職場の安心につながります。
マタハラに対する方針の明確化
まず、会社としての姿勢を言葉にします。許されない行為の範囲、対象者、相談の手順、調査と是正の流れを、誰が読んでも分かる表現にします。トップのメッセージを添え、組織の意思を示すことが肝心です。
禁止事項は抽象的にせず、具体例で示します。制度の申請を妨げる働きかけ、心ない発言、評価や配置での不利益などです。判断の拠り所をはっきりさせると、現場の迷いが減ります。例外判断の基準も合わせて記します。
運用面では、就業規則や各種制度の案内と整合させます。評価や異動の決定書式に、妊娠や休業に関する配慮欄を設ける。説明責任を文章化し、記録に残す仕組みに変えると、マタニティハラスメント防止が日常業務に根づきます。
社内での周知と啓発
方針は出して終わりではありません。入社時ガイダンス、年度初めの研修、管理職向けのケーススタディを計画に組み込みます。短い動画やクイズ形式の学習も効果的です。忙しい現場でも続けやすい形が続きます。
管理職には、声のかけ方を練習する場が必要です。ロールプレイで面談の進め方や配慮の確認を体で覚えます。通院や在宅の調整、役割の再設計など、現実的な落としどころを一緒に探す訓練が役立つでしょう。
社内ポータルに事例集とFAQを置き、申請の手順や連絡文の例文を載せます。また、匿名の簡易相談フォームを設けると、初期の不安が拾いやすくなります。年に一度のアンケートで理解度と風土を測り、結果を部署へフィードバックします。
相談に対応するために必要な体制の整備
相談窓口は複数用意します。人事、産業保健、外部の専門窓口を並行して案内し、連絡の経路を選べるようにします。匿名の受付も設け、立場に左右されない安全な入口を守ります。
一次対応は、事実確認よりも安心の確保を優先します。傾聴、保護、必要な手当の整理を先に行い、記録は標準様式で残します。調査の範囲や関係者への通知計画、守秘の取り扱いを最初に共有することが大切です。
是正措置は時間軸で管理します。暫定配慮、関係者への指導、配置や評価の見直し、再発防止策の実施までを時系列で追います。報復の禁止と健康面のフォローも欠かせません。指標を定め、件数や対応期間を定期的に点検すると改善が進みます。
ハラスメントの意識が高まっている昨今、中小企業にも対策を義務化する「パワハラ防止法」などが制定されました。
「コマッタサン」は、従業員が安心して報告・相談できる社外窓口として社内のハラスメント対策になるとともに、被害者の不要な退職を防ぎ、採用にかかるコストを削減できるサービスです。

まとめ
本記事では、マタハラの定義と事例、認定の見方、予防の手順を整理しました。制度妨害や状態への無配慮、不利益な扱いを見逃さず、因果関係や時期、正当理由、環境の害を記録で確かめることが要です。
実務では方針の明文化、周知と訓練、相談体制の三本柱で回します。評価や配置の決裁記録を整え、報復の禁止を徹底する。まず窓口とFAQ、面談の型づくりから始め、改善を重ねて安心して働ける職場へ。
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